10種類の本棚について

鎖でつながれた本と本棚と太陽の関係は、自由で独創的な関係として継承されています。会場に点在する本棚は、新しい思考と出会う装置です。順路はありません。気の向くままに歩き回り、本棚に込められたテーマに紐づく本と遭遇してください。窓から注ぐ太陽の光を感じ、窓から見える風景を見ながら、その場所に漂う思考と向き合うことができます。

Wall

都市の中にある壁。3枚の壁は太陽の光を切り取る。壁は孤独が隣り合うために存在し、本を読むための場所を作り出す。壁の隙間から差し込む太陽の光は、孤独を味わうために存在している。

Perch

本を読むための止まり木。大きな角筒を井桁型に組み上げた。左官で仕上げた凹凸のある表層は、太陽の光によって表情が変わる。光と影が織り成す本棚は、本を楽しむ遊具のようでもある。

Halfpipe

ストリートから生まれた造形。身体を躍動させる造形と本棚を組み合わせた。都市のエッジから生まれたカルチャは、都市のパブリックと寄り添う。人が集まる居場所、文化が混交する居場所となる。

Green

6つの大陸に生息する植物。地球と植物の関係を表現している。本棚と円盤は互いを支え合い、本を読むための木陰を作り出している。植物が太陽の光で生きているように、人は太陽の光で本を読む。

Chaise Longue

心地よい曲線。身体と本棚が重なり、本と向き合う場所となる。本棚に身体を委ねる曲線を加え、眺めの良い居場所を作り出す。本を読み、窓から見える風景を楽しみ、身体を休める。

Valley

抽象と具象を考えるフォルム。渓谷は太陽の光を和らげ、生態系をつくる。形状が作り上げる環境こそが、その場所の本質となっていく。本を置くと本棚となり、人が座ると椅子になる。

Floating

浮遊する本。1冊のための本棚が連なり、木漏れ日を作り出す。詩が言葉から作るものだとするなら、社会は思考から作られるものだろう。絶え間なく漂う思考を切り取り、社会の断面を可視化させている。

Translucent

向こう側、を感じる場所。光が透け、影が移ろう。半透明な素材で仕切られた壁に、筒状の本棚が貫通させている。本を読む行為が映し出される様相は、交じり合う文化や自然を表現している。

Skyscraper

カラフルなモノリス。金属製の本棚は、窓から見える建物から採取した色を塗布した。本棚が夕陽に照らされると、カラフルな反射光が室内の壁や床に映し出される。本を読み終えると屋外と室内の風景が重なり、時間と場所の関係が深まる。

Slant

横たわる円柱に寄り掛かる立方体。均衡する相互関係が居場所を作る。円柱は傾いた立方体を支え、立方体は円柱の回転を止めている。円柱は人が座ることができ、立方体は本が倒れない傾きを保つ。